【労働時間】割増賃金

前回解説しました「時間外労働の基本」に関連して、今回は「割増賃金」について説明します。

★割増賃金とは
事業主は、従業員に法定労働時間を超える時間外労働(いわゆる残業)をさせたとき、その時間外労働に応じた割増賃金を支払なければなりません。割増賃金の最低割増率は労働基準法で定められており、以下の通りです。

項目 割増率
時間外労働 2割5分以上5割以下
時間外労働(60時間を超えた部分) 
※H22年の改正による
5割以上
深夜労働(22時~午前5時)
※例外で23時~午前6時の地域・期間あり
2割5分以上
法定休日の労働
※法定外の休日労働は「時間外労働」に該当
3割5分以上5割以下

ポイントは、法定労働時間を超える時間外労働をさせた場合に割増賃金を支払う必要があるという部分です。労働基準法では「法定労働時間」を超える時間外労働をさせた場合、割増賃金の支払いをしなければならないとしています。したがって、従業員の労働時間が所定労働時間を超えても法定労働時間を越えなければ、割増賃金を支払う必要はありません。ただし、通常の賃金を支払う必要はあります。そもそも基本給というのは所定労働時間内の労働に対してい支払われるものですので、所定労働時間を超える時間外労働をさせた場合、その時間に応じた賃金を支払う必要は生じます。その時間が法定労働時間を超えていなければ割増をする必要はないということです。

法定労働時間 法定労働時間  
実際の労働時間 所定労働時間 法定内残業 法定外残業
通常の賃金 要(基本給に含まれる)
(基本給には
含まれない)
不要
割増賃金

不要

不要

法定労働時間と所定労働時間の違いについてはこちら

 

★割増賃金の計算基礎単価
割増賃金の計算基礎単価は以下のように計算します。

種類 割増賃金の計算基礎単価
時給制 時間給
日給制
※諸手当も日給
(日給+諸手当)÷1日の所定労働時間
日給制
※諸手当は月給
(日給÷1日の所定労働時間)+(諸手当÷1か月の平均所定労働時間)
月給制 (月給+諸手当)÷1か月の平均所定労働時間

なお、次の7種類の賃金は労働と直接的な関係が薄く個人的事情に基づいて支給されていることなどから計算基礎単価には以下の賃金は含めなくてよいとされています。

割増賃金の計算基礎単価に算入しなくてよい手当
1.家族手当
2.通勤手当
3.別居手当
4.子女教育手当
5.住宅手当
6.臨時に支払われる賃金
7.1箇月を超える期間ごとに支払われた賃金
(例:賞与等)※なお、除外賃金にあたるか否かは、名称にかかわらず実質によります。例えば上記に該当する名称であっても、全員に一律に定額で支給されるなど、条件に応じて算定されない賃金は除外賃金にあたりません。

 

※参考「労働基準法の条文」

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条  使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
3  使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
5  第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
※青字は平成22年4月施行の改正部分

★平成22年4月に改正労働基準法施行
平成22年4月に改正労働基準法が 施行されます。改正内容の概要は以下の通りです。割増賃金についても見直しが必要な場合がありますので、対応について各企業で検討する必要があります。

1.「時間外労働の限度に関する基準」の見直し
労使で特別条項付き36協定を結ぶ際には、新たに以下の事項が必要になります。
①限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3か月以内の期間、1年間)ごとに、割増賃金率を定めること
②1の率を法定割増賃金率(2割5分以上)を超える率とするよう努めること
③そもそも延長することができる時間数を短くするよう努めること
2.法定割増賃金率の引上げ関係
①1か月(※)60時間を超える時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければりません。
※1か月の起算日は、賃金計算期間の初日、毎月1日、36協定の期間の初日などにすることが考えられます。
②上記の時間外労働を行わせた労働者について、労使協定により、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払に代えて、有給の休暇を与えることができることとなりました。
3.年次有給休暇の時間単位付与
労使協定を締結すれば、年に5日を限度として、時間単位(※)で年次有給休暇を与えることができるようになります。(時間単位年休)

皆様は平成22年4月施行の改正労働基準法への対応はお済ですか?制度の見直しや規定の変更等が必要になります。早めに対応しましょう。(改正労働基準法についてはこちら) 

以上、今回は割増賃金について解説しました。

※労働時間関係の解説は以下参照ください。

1.高まる労働時間管理の重要性
2.法定労働時間と所定労働時間
3.時間外労働の基本
4.割増賃金
5.休憩の基本
6.休日の基本
7.振替休日と代休
8.労働時間・休憩・休日の適用除外
9.名ばかり管理職
10.年次有給休暇の基本

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