【労働時間】労働時間の適用除外

今回は労働基準法の労働時間の規定が適用されないものについて解説します。

★労働時間の適用除外
労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定は以下のものには適用されません。

①農業、畜産・水産業の事業に従事する者(林業は含まれない)
②管理・監督者、及び機密の事務を取り扱う者
③監視または断続的労働に従事する者で使用者が行政官庁の許可を受けたもの

ただし、深夜業や年次有給休暇については適用されますのでご注意ください。
では、それぞれについて申し少し具体的に説明します。

 

①農業、畜産・水産業の事業に従事する者(林業は含まれない)
農業、畜産・水産業者は労働基準法の労働時間、休憩、休日の規定が適用されません。これらの業種は天候等の自然に影響されることが多く、季節的な繁閑の差が大きいため適用除外となっています。

 

②管理・監督者、及び機密の事務を取り扱う者
労働時間関係で近年トラブルが増えているのがこの管理監督者についてです。トラブルの主な原因は法的な意味の管理監督者と会社が資格等級として位置付けている管理監督者に差があるからです。ここでいう管理監督者とは法律的には以下の条件をすべて満たしているものをいいます。

①経営方針の決定に参加し、または労務管理上の指揮権限を付与されていること
経営会議に参加するなど実体として経営に参加している必要があります。社員の採用の決定権がある、もしくは決定に重要な影響を与える地位にある等もポイントになります。
②勤務時間について自由裁量を有すること 勤務時間に自由裁量がある必要があります。したがって、上司に勤務時間を指示されたり、あるいは規定等で勤務時間を拘束されている場合は、管理監督者に該当しない可能性が高いです。
③役付手当等によりその地位にふさわしい待遇を受けていること 管理・監督者は一般の社員と比して給与が優遇うされている必要があります。例えば、管理監督者でも評価が低ければ一般職社員のよりも給与が低くなる可能性がある場合は管理監督者として認められない可能性が高いです。

本来は、3つの要件を満たさないにもかかわらず管理監督者として時間外労働手当を支給しなかったために、後から従業員に提訴されるという例が増えています。自社に管理監督者をもう一度見直してみましょう。

 

③監視または断続的労働に従事する者で使用者が行政官庁の許可を受けたもの
監視または断続的労働に従事する者は使用者が行政官庁の許可を受ければ、労働時間・休憩・休日の規定が適用されません。ここでいう監視・断続的業務とは精神的・肉体的負荷が小さいものに限ります。例えば、守衛、重役専用の自動車運転手、団地管理人、ビル警備員などです。
監視または断続的労働に該当するかどうか以下がその判断ポイントです。

監視労働に従事する者とは、原則として一定部署にあって監視するのを本来の業務とするものですが、精神的緊張の高い業務、危険又は有害な場所における業務等は、許可の対象になりません。
断続的労働に従事する者とは、本来作業が間歇的に行われ、作業時間が継続することなく、手待時間が多い業務に従事する者です。

監視・断続的業務に該当しても、使用者が行政官庁の許可を得ていなければ労働時間・休憩・休日の適用除外とすることはできませんのでご注意ください。

 

★参考条文と通達
※参考「労働基準法 条文」

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条  この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
 一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
 二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
 三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

※参考 通達「労働基準法の施行に関する件」から抜粋

(三) 監視に従事する者は原則として一定部署に在つて監視するのを本来の業務とし常態として身体又は精神緊張の少いものゝ意であり、その許可は概ね次の基準によつて取り扱うこと。
(1) 火の番、門番、守衛、水路番、メーター監視等の如きものは許可すること。
(2) 犯罪人の看視、交通関係の監視等精神緊張の著しく高いものは許可しないこと。

(四) 断続的労働に従事する者とは、休憩時間は少いが手持時間が多い者の意であり、その許可は概ね次の基準によつて取扱うこと。
(1) 修繕夫の如く通常は業務困難であるが事故発生に備へて待期するものは許可すること。
(2) 貨物の積卸に従事する者寄宿舎の賄人等については、作業時間と手持時間折半の程度迄許可すること。
(3) 鉄道踏切番の如きものについては一日交通量十往復程度迄許可すること。
(4) 汽罐夫その他特に危険な業務に従事する者については許可しないこと。

(五) 規則第二三条は常態として殆んど労働する必要のない勤務のみを認める趣旨であるから、その許可は概ね次の基準によつて取り扱うこと。
(1) 原則として通常の労働の継続は許可せず定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態発生の準備等を目的とするものに限つて許可すること。
(2) 宿直、日直共相当の手当の支給、宿直については相当の睡眠設備を条件として許可すること。

※労働時間関係の解説は以下参照ください。

1.高まる労働時間管理の重要性
2.法定労働時間と所定労働時間
3.時間外労働の基本
4.割増賃金
5.休憩の基本
6.休日の基本
7.振替休日と代休
8.労働時間・休憩・休日の適用除外
9.名ばかり管理職
10.年次有給休暇の基本

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