【就業規則の作成⑨】退職・解雇

今回は就業規則の退職・解雇部分について説明します。

1.総則
2.採用
3.異動
4.服務規律
5.労働時間、休憩、休日
6.休暇等

7.賃金
8.退職金
9.退職・解雇
10.休職
11.災害補償
12.安全・衛生
13.教育
14.表彰および制裁

 

★『退職・解雇』に記載する事項

この章には、退職・解雇について記載します。退職は、就業規則の絶対的記載事項です。つまり、就業規則への記載が法律で義務付けられている項目です。しかも、労使トラブルの中で最も比率が高い項目です。したがって、トラブルを防止するためにも、明確なルールを記載しなければなりません。

項目  内容
①定年退職  定年退職の年齢や定年後の再雇用について記載します。
②退職の種類  定年以外の退職の種類を記載します。
③解雇 解雇事由について記載します。
④退職時の遵守事項  退職時の手続きや業務の引き継ぎなどについて記載します。

★記載例

①定年退職
現在、定年退職の年齢は60歳未満にすることはできません。また、平成18年の改正高齢者雇用安定法の施行により、65歳未満の定年年齢を定める場合は、①定年年齢を65歳まで引き上げ、②65歳までの継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止 のいずれかの措置を講じなければなりません。

第9章 退職・解雇
第35条(定年退職)
1 従業員の定年は満60歳とし、定年に達した日をもって退職とする。
2 前項の規定にかかわらず、会社は、引き続き定年以降にも勤務することを希望し、定年後の再雇用に関する労使協定に定められた基準に該当した従業員については、定年に達した日の翌日から満65歳に至るまで再雇用する。

②退職
定年退職以外の退職についてまとめます。突然退職されると業務の運営や引き継ぎに支障が出る企業がほとんどです。そこで自己都合退職は少なくとも何日前に申し出れば良いかを規定します。

第36条(退職)
1 前条に定めるもののほか、従業員が次のいずれかに該当するときは、退職とする。
 ① 退職を願い出て会社から承認されたとき、又は退職願を提出して14日を経過したとき
 ② 期間を定めて雇用されている場合に期間満了となったとき
 ③ 休職期間が満了しても休職事由が消滅しないとき
 ④ 死亡したとき
 ⑤ 役員に就任したとき
 ⑥ その他退職について労使で合意したとき
2 自己の都合により退職を希望するものは、退職希望日の少なくとも30日前までに退職願を提出しなければならない。

③解雇
解雇事由についてまとめます。解雇については非常にトラブルが多いため、正確な記載が必要です。制裁の1つである懲戒解雇については「表彰・制裁」の章で記載します。

第37条(解雇)
1 従業員が次のいずれかに該当した場合、会社は当該従業員を解雇することができる。
① 勤務成績又は職務遂行能力が著しく不良で、向上の見込みなく、他の職務への転換ができない等、就業に適さないと認められたとき
② 勤務状況が著しく不良で改善の見込みがないとき
③ 精神又は身体の故障により業務提供が不完全なとき
④ 試用期間中に従業員として不適格であると認められた時
⑤ 業務上の負傷又は疾病により、療養開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、従業員が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき又は会社が打ち切り補償を支払ったとき
⑥ 事業の運営上やむを得ない事情又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の継続が困難となったとき
⑦ 事業の運営上やむを得ない事情により、事業の縮小・転換又は部門の閉鎖等の事由がある場合で、かつ、他の職務に転換させることが困難なとき
⑧ この規則に定める重大な懲戒事由に該当したとき
⑨ その他前各号に準ずるやむを得ない事情があるとき
第38条(解雇予告)
1.前条の規定により従業員を解雇する場合、会社は少なくとも30日前に予告し、又は予告に変えて平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う。ただし、次の各号のいずれかに該当するものを除く。
 ① 日々雇い入れられる従業員(1カ月を超えて引き続き雇用されるものを除く)
 ② 2か月以内の期間を定めて雇用する従業員(その期間を超えて引き続き雇用されるものを除く)
 ③ 季節的業務に4カ月以内の期間を定めて雇用される従業員(当該期間を超えて引き続き雇用されるものを除く)
 ④ 試用期間中の従業員(14日を超えて引き続き雇用されるものを除く)
2.天災地変その他やむを得ない事由のため、事業の継続が不可能となった場合の解雇で、所轄労働基準監督署長の認定を受けたときは、前項の規定は適用しない。
第39条(解雇制限)
従業員が次の各号のいずれかに該当するときは、それぞれ各号に定める期間中は解雇しない。ただし、天災地変その他やむを得ない事由のため、事業の継続が不可能となった場合、又は打切補償を支払った場合には、この限りでない。
 ① 業務上の傷病による療養のために休業する期間及びその後30日間
 ② 産前産後の女性従業員が休業する期間及びその後30日間
第40条(解雇理由証明書)
会社は、従業員を解雇する際に従業員から請求があった場合は解雇の理由をきさいした証明書を書面で遅滞なく交付する。

④退職時の遵守事項
退職後に、退職者が業務の引き継ぎをしなかった、機密を外部に漏らしてしまった等のトラブルが起こることがあります。したがって、退職時の遵守事項を明記します。

第41条(退職・解雇時の遵守事項)
1.従業員は退職し又は解雇された場合、退職日又は解雇日までの期間に担当業務を後任者に引き継がなければならない。
2.従業員は、退職し又は解雇された場合、会社から貸与された物品その他会社に属するものを直ちに返還し、会社に債務があるときは退職又は解雇の日までに精算しなければならない。また、貸与された物品等を紛失した場合は、相当額を弁済しなければならない。
3.会社は、従業員が退職し又は解雇されたときは、退職又は解雇の日から1ヵ月以内に賃金を支払い、その他必要な手続を行い、従業員の権利に属する金品について返還する。
4.会社は、退職し又は解雇された従業員が、退職証明書、解雇理由証明書等を請求したときは、遅滞なくこれを交付する。
5.退職し又は解雇された従業員は、退職し又は解雇された後も職務上知り得た機密を他へ漏らしてはならない。
6.退職し又は解雇された従業員は、離職後といえども、その在職中に行った職務、行為並びに離職後の守秘義務に対して責任を負い、これに違反して会社が損害を受けたときには、その損害を賠償しなければならない。

以上、就業規則の退職・解雇に関する説明でした。繰り返しになりますが、トラブルが多い項目のため、上記の例以外にも各企業特有の項目を追加することをお勧めします。

※就業規則の説明については以下参照

1.就業規則とは
2.就業規則の記載内容
3.就業規則の作成手続き
4.就業規則の良し悪し

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代表 森崎和敏