【給与計算③】給与計算前の情報収集

前回まで給与計算の全体像と手順を解説しました。今回から、実際に給与計算の具体的内容に入ります。今日は給与計算前の事前準備についてです。前回の「給与計算の手順」でも概要を説明しましたが、さらに詳しく解説します。 

★事前準備としてやること
事前準備は主に情報収集が主になります。収集する情報は以下の通りです。

・社員の昇給、降給情報
・社員の各種異動情報(入退社、結婚、出産、住所変更など)
・社員の勤怠情報(残業、休日労働、遅刻早退、有休取得など)
・関係法律の法改正情報

これらの情報の詳細と目的についてさらに詳しくみてまみます。

★社員の昇給・降給情報
社員の給与に変更がないかを確認します。主な昇給や降給としては以下があげられます。ここでいう昇給・降給の対象は「基本給」についてです。

定期昇給 ほとんどの企業は年1~2回の定期昇給があります。時期は年1回の場合は春、年2回の場合は春と秋が多いようです。定期昇給ではほぼ全社員の基本給が変更となるため、計算時に注意しなければなりません。
ベースアップ 賃金テーブルが全体的にアップするケースです。従業員全員の基本給があがることになります。業績が好調な企業は毎年ベースアップを実施する場合もあります。
昇格による昇給 等級制度や役職制度を取り入れている会社では、従業員が昇格したときに昇給するケースがほとんどです。昇格の時期は企業によりさまざまです。
降格による降給 何らかの理由で降格したときに、給与も下がるパターンです。従業員が服務規律違反を繰り返したり、罪を犯した場合や、健康上の理由により今までの業務に就けなくなったケースなどが考えられます。
雇用形態の変更による昇給・降給与 雇用形態が変更することで基本給が変更するケースがあります。パートから正社員になって昇給するケース、または正社員が定年して再雇用社員になって降給するケースなどがあります。

以上が、従業員の給与の大部分を占める基本給に関る情報です。

★社員の各種異動情報(入退社、結婚、出産、住所変更など)
諸手当の計算や所得税の計算等に必要になる情報です。主なものを以下にあげます。

入社退社 言うまでもなく入社退社情報は必要です。社会保険料を翌月控除している場合、入社月は社会保険料控除が無く、退社月は末日退職のときに社会保険料を2か月分控除する必要があるため、注意が必要です。
扶養家族 扶養家族の人数により源泉所得税が異なります。このため、結婚や出産等で扶養家族が変更した場合は給与に反映させる必要があります。しかし、これらの情報は従業員が申告しなければわからないため、異動時には人事へ報告するように周知徹底しましょう。
通勤情報 通勤手当が支給されている場合、住所変更等で通勤距離や通勤定期が変更になったときは通勤手当への反映が必要です。この情報も従業員が深刻しなければわからないため、異動時には人事へ報告するように周知徹底しましょう。
部署異動 従業員が部署を異動した場合、手当が変更になることがあります。例えば特殊な作業をする従業員に支給されている特殊作業手当の有無が変更になったり、単身赴任者には単身赴任手当が支給さたりというように、部署異動に関する手当に注意しなければなりません。部署異動は人事も絡みますので情報は収集しやすいでしょう。

 

★社員の勤怠情報
社員の勤怠は給与と密接な関係があります。勤怠情報は集めてから集計する必要があるため、時間と労力がかかります。

出勤・欠勤日数 従業員が勤務した日数です。社会保険の標準報酬を算出する際に必要な情報となります。欠勤した日についは給与を支給しないことになるため、欠勤情報も必要です。
有給取得日数 有給休暇の取得情報です。有給休暇を取得した日は出勤したものとみなします。
勤務時間 実際に勤務した時間の情報です。特に時給計算者にとっては重要な情報です。
遅刻・早退時間 遅刻・早退した時間の情報です。遅刻・早退した場合はその時間数分の賃金を控除することになります。
時間外労働時間 時間外労働手当(いわゆる残業手当)の計算のために必要な情報です。法定外残業と法定内残業とで割増賃金率を区分している企業では、時間外労働の時間数も法定内と法定外で区分しなければなりません。
深夜労働時間 深夜労働手当を計算するために必要な情報です。深夜とは原則22時~午前5時です。ただし、一部地域では23時~午前6時の場合があります。
休日労働時間  休日労働手当の計算のために必要な情報です。これも、法定休日労働と法定内休日労働とで割増賃金率を区分している企業では、法定内と法定外で区分しなければなりません。

集計は間違いのないよう、専用ソフト等を使用して計算しましょう。

★関係法律の法改正情報
法改正情報も給与への影響が大きいため、継続的に情報収集する必要があります。

社会保険諸法令 社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料等)の算出や控除関係します。例えば協会けんぽが今年度の健康保険料率の引き上げを決定しています。また、厚生年金保険料は毎年9月分から段階的に引き上げられています。
労働保険諸法令 労働保険料(雇用保険料や労災保険料等)の算出や控除に関係します。雇用保険料率は昨年改正されました。景気の動向や経済環境の変化で料率が改正されるため注意が必要です。
所得税法 源泉所得税に関係します。税率やルールなど毎年のように細かい変更があります。旬なトピックとしては民主党が扶養控除の廃止を掲げています。
地方税法 住民税について規定があります。住民税は市町村や都道府県の管轄です。

法律の改正情報は各省庁のホームページ等に掲載されます。労務関係の雑誌やメルマガ等を購読するのも有効な手段です。

以上、給与計算前の情報収集について解説しました。

賃金・給与計算に関する情報は以下参照

◎賃金(給与)の基本
◎賃金(給与)の決定方法
◎給与の全体像
◎給与計算の手順
◎給与計算前の情報収集
◎給与計算の実施
◎給与の支払い
◎給与計算後の届出
◎税金、社会保険料の支払い
◎給与計算のアウトソーシング(代行委託)

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