今回は就業規則の作成手続きについて解説します。
就業規則の作成手続き
就業規則は作成手続きについても労働基準法や通達で定めがあります。したがって、ただ法律に沿った規則を作るだけでなく、以下の4つのステップで作成する必要があります。
1.就業規則の作成(文書化) | 会社に最適な就業規則を文書で作成します。 |
2.労働者代表の意見聴取 | 労働者の過半数を代表する者の意見を聞きます。 |
3.労働基準監督署への届出 | 作成した就業規則と代表労働者の意見書を労働基準監督署へ提出します。 |
4.就業規則の周知 | 就業規則を労働者へ周知します。(周知していない規則は効力がありません。) |
各ステップについて、もう少し具体的に説明します。
1.就業規則の作成(文書化)
まずは就業規則を作成します。記載する内容については、前回解説しました「就業規則の記載内容」を参照ください。
ポイントは自社に適した就業規則を作成するということです。インターネットや本に載っているひな型はあくまで参考であり、自社に最適な形にカスタマイズする必要があります。人事担当者が経験豊富な方であれば、その方が中心になって経営者と共に作成すると良いでしょう。そうでない場合は、社会保険労務士をご利用いただくのが有効な選択肢です。
2.労働者代表の意見聴取
就業規則を作成したら、労働者代表の意見を聞く必要があります。ここでは意見を聞くことが法的要件であり、同意まで得る必要はありません。ただし、「3.労働基準監督署への届出」において反対意見が多い意見書を添付して提出した場合、労働基準監督署から是正指示を受ける可能性が高くなります。
※関係条文
労働基準法九十条(作成の手続き)
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
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条文にあるとおり、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は労働組合の意見を、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聞く必要があります。この労働者の過半数を代表する者についてはいくつか注意点があります。
労働者の過半数を代表する者の注意点
①管理監督者ではないこと。管理監督者は代表者になれません。
②投票、挙手等の方法による民主的な手続きにより選出された者であること。事業主の指名は不可です。 ③事業所が複数ある場合は、事業所ごとに代表者が必要です。 |
②については、説明の通り、事業主が指名することはできません。あくまで労働者が選出するという点がポイントです。投票や挙手以外の方法では「労働者同士の話し合い」や「メールで過半数の同意を得る」などの方法があります。
3.労働基準監督署への届出
意見聴取まで完了したら、労働基準監督署へ就業規則と添付書類を提出します。提出する書類は以下の通りです。
※届出書類
①就業規則 ②就業規則届 ③労働者代表の意見書 ④就業規則に関係する労使協定
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書類が不足していると受理されないため、必ずすべての書類を揃えて提出します。特に労使協定については見落としがちなものもありますので注意しましょう。
4.就業規則の周知
届出まで済んだら就業規則が有効になると勘違いされる方が少なくありません。しかし、実際は就業規則を周知しなければ、その規則は無効となります。したがって、必ず就業規則を周知する必要があります。周知の方法については以下の選択肢があります。
1.掲示または備え付け | 常に会社の見やすい場所に掲示または備え付けをする。例えば休憩場所や食堂など。 |
2.労働者への配布 | 各労働者へ就業規則を配布します。ただし、この場合、労働者への周知が簡易な半面、規則内容が外部に漏れたり、あるいは印刷コストがかかるというデメリットがあります。 |
3.磁気テープ・ディスク | 就業規則を磁気テープや磁気ディスク等に記録し、労働者がいつでも確認できるように機器を設置する。例えばPCとCD-ROMなどです。OA機器が苦手な人には周知しにくいというデメリットがあります。 |
4.社内HPやイントラネット | 社内ホームページやイントラネットに掲載し、従業員がいつでもPCや携帯機器から確認できるようにします。アクセス制限をすれば機密保持にも効果的です。ただし、OA機器が苦手な人には周知しにくいというデメリットがあります。 |
以上の周知方法があります。例えば製造業では、事務スタッフにはイントラネットで、現場作業者には冊子で配布するといったように複数の方法を併用する企業もあります。いずれにせよ、就業規則の内容は社員全員に周知できるように自社に最適な方法を選びましょう。
※周知の有効な方法
有効に周知するためには、上記の方法でただ周知するだけではなく、以下を実施すると有効です。
・就業規則の説明会
・新人研修や管理職研修の内容に就業規則を盛り込む
以上、今回は就業規則の作成手続きについて解説しました。
就業規則は作るだけでは、ないと同様です。必ず、正規のステップで労働者への周知までおこなうようにしましょう。
◆就業規則の情報は以下参照
1.就業規則とは 2.就業規則の記載内容 3.就業規則の作成手続き 4.就業規則の良し悪し |
※静岡(清水、藤枝、焼津、島田、富士)の就業規則作成はこちら⇒就業規則作成サポート
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あおいマネジメントサービス
代表 森崎和敏