【企業のメンタルヘルス・うつ病対策②】体制作り(法廷部分)

『産業保健体制の整備1-1 ~体制作り(法定部分)~』

産業保健の目的」に続き、今回は「産業保健の整備」について説明します。
産業保険体制の整備についてはいろいろな書籍やホームページに記載があります。
厚生労働省も企業のメンタルヘルス対策として詳しい指針を出しています。
しかし、それらの記述は複雑で奥が深く、特に産業体制をこれから初めて整備しようという企業にとっては難しいものです。
そこで「産業保健の整備」についてわかりやすく解説します。
産業保健体制は以下のステップで整備します。
★産業保健体制の整備ステップ

1.体制作り(法定)
 体制作り(任意)
衛生管理体制・組織の整備
2.ルール整備 規程・ルールの明確化
3.教育 ルールや基礎知識の教育・周知徹底
4.適正運用 規程・ルールに則した効果的な運用

今回は、このステップの中の「1.体制作り」について説明します。
体制と一言で言っても企業規模や業種によって整備すべき内容が若干異なります。
この体制には、法律で事業主に実施義務がある「法定部分」と、企業が任意に実施する「任意部分」があります。さらに法定部分は企業規模により異なります。

産業保健

体制

法定部分(従業員50人以上)
法定部分(全ての事業所)
任意実施部分

では、その体制の具体的な項目を以下に示します。
 

★産業保健の体制と組織

法定
部分(従業員50人以上)

法定部分

健康
管理

1.過重労働対策
2.健康診断

規則

3.就業規則・休職規程
体制 4.(安全)衛生推進者

50人未満任意

組織
体制

5.産業医
6.衛生管理者
7.衛生委員会
8.安全委員会 ※特定業種のみ

任意

メンタルヘルス対策

9.精神科顧問医
10.メンタルヘルス研修
11.休職・復職プログラム
12.組織診断
13.相談体制

健康作り

14.メタボ対策
15.健康教育

まずは上表の組織体制を整備しなければなりません。
特に法定部分の体制が整備されておらずにメンタルヘルス不調者等が発生した場合は、企業責任を問われることになります。
したがって、先ずは法定部分の整備をし、次に任意部分についても検討します。
任意部分意ついては「任意」であっても、厚生労働省の指針にはっきりと記載されているものですので、実施することが望ましいです。
今回は、法定部分の項目を解説します。
 

1.過重労働対策
平成18年の労働安全衛生法改正により、「時間外・休日労働時間が1ヶ月当たり100時間を超える長時間労働者であって、申出を行ったもの」については、医師による面接指導が義務付けられました。面接指導の結果、必要に応じて労働時間の短縮等の措置も講じなければなりません。いずれにせよ、医師との連携が必要になります。
 

2.健康診断
安全衛生法により1年に1回従業員の健康診断を実施することが事業主に義務付けられています。さらにその結果によっては2次健康診断も必要です。特殊業務に就く従業員には特殊健康診断を実施することも義務付けられています。さらに健康保険法の改正により、平成20年4月から40歳以上の医療保険加入者にメタボリックシンドロームに着目した特定健康診査および特定保険指導の実施が義務付けられています。
 

3.就業規則・休職規程
常時10人以上の労働者
を雇用する事業主は就業規則を作成しなければなりません。そして、休職の規定も完備しておく必要があります。休職規程はそもそも作成義務はありませんが、日本の多くの企業が休職制度を導入しています。したがって、制度の有無やその内容について具体的に定める必要があります。近年では休職制度は無しとする会社もあります。
 

4.(安全)衛生推進者
従業員が10~49人の事業場について、衛生推進者(製造業など一定の業種については、安全衛生推進者)を選任し、その者に事業場における安全衛生にかかる業務(衛生推進者にあっては、衛生にかかる業務)を担当させなければなりません。

※(安全)衛生推進者の業務
・労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
・労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
・健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
・労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
・その他労働災害を防止するために必要な業務 など

  
5.産業医
産業医は、安全衛生法により従業員50人以上の事業所に選任義務があります。産業医の業務は、以下の通りです。

※産業医の業務
・月1回の職場巡視義務、従業員の健康管理
・従業員の就業可否の判断・就業支援
・医療機関との情報貢献
・衛生委員会への参加・職場環境改善の為の助言
・感染症の予防
・緊急医療対応 など

産業医がいるといないとでは衛生管理に大きな差が出ます。
ただし、自社に適した産業医でなければ効果がありません。産業医を選任する際は以下の点に留意してください。

※産業の選任時の留意点

  1. 自社で必要とする分野の知識や経験を有している医師の選任(特に内科精神科分野が企業では重視されます。
  2. 産業分野の知識や経験があり、企業の立場に立った判断ができる医師の選任。
  3. 十分な臨床経験がある医師の選任。

  
 

6.衛生管理者
安全衛生法により従業員50人以上の事業所に選任義務があります。衛生管理者は国家資格であるため、国家試験に合格しなければなりません。主な業務は、以下の通りです。

※衛生管理者の業務
・健康に異常のある者の発見及び措置
・作業環境の衛生上の調査、作業条件、施設等の衛生上の改善、
・労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
・衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項
・労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成、
・衛生日誌の記載等職務上の記録の整備 など

 

7.衛生委員会
安全衛生法により従業員50人以上の事業所に衛生委員会の設置及び月1回以上の実施の義務があります。委員会の審議事項は以下の通りです。

※衛生委員会の業務
・健康障害防止の為の基本対策、
・健康の保持増進の為の基本対策、
・労働災害の原因及び再発防止対策、
・健康障害の防止及び保持増進に関すること など

 

8.安全委員会
従業員50人以上の製造業などの特定事業
では、安全衛生法により安全員会の設置義務及び月1回以上実施の義務があります。衛生委員会と合同で安全衛生委員会として実施することもできます。委員会の審議事項は以下の通りです。

※安全委員会の業務
・労働者の危険防止対策、
・労働災害の原因及び再発防止対策、
・労働者の危険防止に関する重要事項 など

今回の説明はここまでです。
「体制」の任意部分については次回説明します。

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代表 森崎和敏