【企業のメンタルヘルス・うつ病対策④】ルールの整備

『産業保健体制の整備2 ~ルール整備~』

前回までは、産業保健体制の「体制作り」について説明しました。
今回は『ルール整備』について解説します。

1.体制作り(法定)
 体制作り(任意)
衛生管理体制・組織の整備
2.ルール整備 規程・ルールの明確化
3.教育 ルールや基礎知識の教育・周知徹底
4.適正運用 規程・ルールに則した効果的な運用

この『ルール整備』は前回までの体制つくりの中で「3.就業規則・休職規程」「11.休職・復職プログラム」に大きく関係します。

法定
部分(従業員50人以上)

法定部分

健康
管理

1.過重労働対策
2.健康診断

規則

3.就業規則・休職規程
体制 4.(安全)衛生推進者

50人未満任意

組織
体制

5.産業医
6.衛生管理者
7.衛生委員会
8.安全委員会 ※特定業種のみ

任意

メンタルヘルス対策

9.精神科顧問医
10.メンタルヘルス研修
11.休職・復職プログラム
12.組織診断
13.相談体制

健康作り

14.メタボ対策
15.健康教育

体制が整備されたら、適切な運用をするためのルールが必要です。
産業保健体制で必要なるルールとは主として以下のものになります。
1.休職規程
2.休職・復職プログラム
3.健康管理規定
4.産業保健関係者の運用ルール

これらの整理し、周知徹底することで初めて産業保健体制の運用がスタートします。
ではそれぞれの内容について具体的に解説します。

 

1.休職規程
日本の多くの企業の就業規則に休職規定が含まれています。(あるいは就業規則とは別に休職規程があります。)
この休職規定は、元来は労働者がケガをしたり、あるいは精神疾患以外の病気(例えば糖尿病、心疾患など)を患ったときのために作られたものでした。
したがって、休職期間が年単位であったりと比較的長く、休職や復職の細かい取り決めはありませんでした。
しかし、近年精神疾患による休職者が増加する中で、この昔ながらの休職規定を採用している企業で従業員がメンタルヘルス不調に陥ったときに不都合が生じてきました。
例えば以下の通りです。

・休職期間満了間際に復職し、しばらく経ってからまた休職する。(繰り返し休職
・休職期間満了間際に復職するため、解雇できない。
・自分の担当医の診断書をかざして堂々と休職する。
・産業医が精神科ではないため、従業員の担当医の判断にしたがわざるを得ない。
・明らかに精神状態が不安定な従業員が、医療機関で受診することを拒否する。

このような不都合が生じる背景には、以下のような精神疾患特有の特徴があるからです。

・精神疾患の患者は肉体的には健康な人が多いので、精神を患っていても出社したり、ある程度の作業をすることは可能。
・精神疾患は特有な分野のため、通常の内科医や外科医では判断ができない。(多くの企業の産業医は内科・外科が多い)。
・精神疾患の判断基準が広くなっているため、性格障害や社会不適応の人でも病気とされるようになった。
・解雇されることを恐れ、体調不良でも復職して働こうとする。

しかし、正常に働くことができない従業員を雇用し続けていることは企業にとって負担になりますし、中途半端な就業や復職のプレッシャーはその従業員の回復の妨げにもなります。
今後は精神疾患の従業員にも対応できる休職規程(規定)を整備する必要があります。

そのポイントは以下の通りです。

診断書提出の義務化 長期間私傷病欠勤する場合は診断書提出を義務化する。
休職期間 休職期間は最低限の期間に設定し、物理的な傷病者は別扱いにする。また、短期間での休職・復職の繰り返しは認めない。
休職事由 不完全な復職を防止するため、休職事由に「労務の不完全提供」を揚げる。
会社指定との面談 企業側の立場も理解できる精神科医への面談を義務付ける。
休職期間満了時の対応 休職期間満了後は退職となることを明記する。
解雇事由 「労務の不完全提供」を解雇事由に揚げる。

 

2.休職・復職プログラム
 次に休職・復職プログラムの整備です。これは上述の休職規定をさらに運用レベルにまで落し込んだものです。
物理的な傷病であれば、休職規定だけで十分ですが、精神疾患の従業員に対応するためには、このプログラムが必要です。
主な目的は2つです。

①従業員の復職をサポートする 精神疾患の患者は休職中に自分が解雇されるのではないかという不安に陥ることがしばしばあります。
こういった不安を解消し、治療に専念してもらうように休職・復職プログラムを整備して従業員に周知します。
上司や人事担当者の関り方もこのプログラムの中に盛り込むため、関係者も自分の役割を認識でき、従業員のサポートができます。
②企業のリスク防衛 休職・復職のプログラムを運用することで、会社が従業員への安全配慮義務を果たしている証となります。
また、休職の繰り返しや、休職制度の悪用を防ぐこともできます。

ではどういったプログラムを作成すれば良いのでしょうか。
これは職種や企業の風土、特性により様々であり、一概にこうだと説明できるものではありません。
最も良いのは、この内容に詳しい専門家やコンサルタントと経営者や人事担当者が良く話し合って自社にあったプログラムを策定することです。

ここでは参考に、一般的なプログラム例を掲載します。

※復職プログラムの例

1.復職希望&診断書提出 休職者が復職を希望する場合は、職場復帰可の診断書を添えて復職願を提出する。
2.面談 復職希望者と会社指定の精神科医と面談させ、専門的見地を聞く。
また、上司や人事担当者とも面談する。
3.職場復帰判定委員会 関係者で構成される職場復帰判定委員会を開き、職場復帰を検討。
4.復帰計画の作成 復職者の職場復帰計画を作成する(復帰後の職務内容や就業時間等を計画する)。
5.最終面談 復職希望者と復帰後の計画について擦り合わせをする。
6.職場復帰 職場復帰。
7.職場後のサポート 職場復帰後も最低1年間は、定期的に面談やメディカルチェックを行い、経過観察する。

ここまでは職場のメンタルヘルス対策として最も重要な部分です。
プラスアルファで以下の3,4についても導入されることが望ましいです。

 

3.健康管理規定
従業員自身の健康管理についての規定を作成します。
ここでは従業員が自己の健康を管理する、向上させる義務があることを明記することが重要です。
健康管理の疎かな人間ほど、医療機関の受診を嫌がるケースが多いです。
会社がいくら安全配慮義務を果たすために、従業員に受診を勧めても拒否するというケースもあります(過去のこのケースの裁判例もあります)。
したがって、従業員が最低限自己の健康管理として守るべきことを規定にまとめて周知徹底することで、従業員の健康を確保し、企業リスクを防衛できるのです。

 

4.産業保健関係者の運用ルール
産業保健関係者とは、具体的には人事担当者、人事責任者、経営者、社内医療従事者(産業医、看護師、保健師など)、職場の管理者等です。
誰もが産業保健関係の知識があるわけではありません。しかし、企業として産業保健体制を適正に運用するためには、関係者が最低限の知識とルールを把握する必要があります。
関係者がどういったケースでどう動いたらよいのかという運用ルールを明確にします。これについては従業員全員に周知する必要はありませんが、関係者には周知徹底します。
この運用ルールがあれば、有事のときも円滑な対応ができるようになります。

 

以上、今回は「ルールの整備」について説明しました。
次回は「教育」について説明します。

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代表 森崎和敏