今回は、賃金(給与)の基本について解説します。賃金は労働者のモチベーションや会社の人件費などに関る重要な要素です。人事担当者や経営者は賃金の基本的な考え方や関係する法律等を把握していなければなりません。以下の内容をご覧いただき、知識と実務の整理をしましょう。
★賃金とは
労働基準法で「賃金」とは「賃金,給料,手当,賞与その他名称の如何を問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」とされています。ポイントは以下の3つです。
名称の如何を問わず | 賃金の呼び方はさまざまですが、賃金に該当するかどうかはその性質で判断されます。したがって、呼び方が「給与」であっても「手当」であっても賃金の性質を持っていれば「賃金」となります。 |
労働の対償として | 賃金は労働の対価であるということです。したがって労働とは関係のない任意・恩恵的なものや福利厚生的なものは賃金とみなされない場合があります。 |
使用者が労働者に支払うすべて | 賃金は使用者が支払うものです。したがって、例えばホテルのウェイターが顧客から直接受け取るチップは賃金に該当しません。 |
※賃金の例
賃金に該当するもの | ・給与 ・諸手当 ・賞与 ・就業規則等に規定がある慶弔見舞金 ・就業規則等に規定がある退職金 |
賃金に該当しないもの | ・就業規則等に規定がない慶弔見舞金 ・企業の設備(制服、パソコンなど) ・出張旅費 ・就業規則等に規定がない福利厚生、施設など |
一言で「賃金」とか「給与」と呼んでも、このような違いがあります。「賃金」に該当するかしないかでその扱いが異なりますので、賃金かどうかを見極める要素を明確にしておきましょう。
★賃金の支払い方法
賃金は支払い方法についても労働基準法に規定があります。これを「賃金支払いの5原則」と言います。
原則 | 内容 | 例外 |
通貨払いの原則 | 賃金は必ず通過で支払わなければなりません。 | 法令や労働協約に定めのある現物給与は例外的に認められます。例えば社宅や寮、食事等です。 |
直接払いの原則 | 賃金は直接従業員に支払わなければなりません。委任を受けた代理人や未成年者の親権者や後見人が未成年者の賃金を代わって受け取ることも禁止されています。 | 労働者の同意があれば、労働者が指定する金融機関へその全額を振り込むことも可能です。 |
全額払いの原則 | 賃金は必ず全額支払わなければなりません。ただし右記のものを控除することは認められます。 | ・法令に定めのあるもの(所得税や社会保険料など) ・労使協定で定めたもの(財形貯蓄や社宅家賃など) |
一定期日払いの原則 | 賃金は一定の期日を定めて支払わなければなりません。 | ・臨時支給の賃金 ・賞与 ・査定期間が1カ月を超える場合の皆勤手当・能率手当など |
毎月1回以上払いの原則 | 賃金は毎月1回以上支払わなければなりません。 |
なお、以上の原則に違反した場合は30万円以下の罰金に処せられます。
よく銀行振り込みは当たり前と思っている方がいらっしゃいますが、振り込みはあくまで「労働者の同意のもと」「その全額を」「労働者が指定する金融機関」に支払わなければなりません。会社が振込先を指定することはできませんのでご注意ください。
★賃金に関る法律
賃金に関る法律は様々ですが、企業の賃金(給与)管理として必要となる代表的な法律は以下の通りです。
労働基準法 | 賃金の定義、賃金支払いの5原則、残業代の割増率、減額の制限等について規定があります。 |
社会保険諸法令 | 社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料等)の算出や控除について規定があります。 |
労働保険諸法令 | 労働保険料(雇用保険料や労災保険料等)の算出や控除について規定があります。 |
所得税法 | 源泉所得税について規定があります。 |
地方税法 | 住民税について規定があります。 |
人事担当者や経営者はこれらの法律で賃金に関る部分は理解する必要があります。具体的な内容については後日詳述します。
以上、今回は賃金の基本について解説しました。賃金の原則に自社が適合しているかどうかをもう一度確認してみましょう。
※賃金・給与に関する情報は以下参照
◎賃金(給与)の基本 ◎賃金(給与)の決定方法 ◎給与の全体像 ◎給与計算の手順 ◎給与計算前の情報収集 ◎給与計算の実施 ◎給与の支払い ◎給与計算後の届出 ◎税金、社会保険料の支払い ◎給与計算のアウトソーシング(代行委託) |
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代表 森崎和敏