給与計算の一通りの手順については前回までのブログで解説しました。ご覧になっていただいた通り、いろいろな専門知識とスキルが必要になります。したがって、時間と労力と費用を節約するために給与計算を自社で行わずにアウトソーシング(代行委託)する会社が増えています。弊社にも給与計算に関するお問い合わせが毎月あります。そこで今回は給与計算をアウトソーシングする際のポイントを解説します。
★アウトソーシング業者を選択する際のポイント
給与計算をアウトソーシング(代行委託)する際のポイントは以下の通りです。
①専門知識をもった者が給与計算のチェックをしているかどうか ②給与計算実施のフローは適切かどうか ③給与計算の周辺業務も対応可能かどうか ④締め日と支払日に関してスケジュール的に対応可能か ⑤機密保持体制は万全か ⑥料金が適切か |
①専門知識をもった者が給与計算のチェックをしているかどうか
繰り返しになりますが給与計算は専門知識やスキルが必要とされる業務です。したがって、料金を払って委託するにも関らず専門家が対応してくれないのでは意味がありません。そこで、給与計算を委託する際は以下の確認をお勧めします。
□社会保険労務士が給与計算をしているか? □事務担当者が計算している場合、社会保険労務士がチェックをしているか? □委託先の社会保険労務士は給与計算の経験が豊富か? □税理士事務所に委託する場合、チェックする社会保険労務士がいるか? |
給与計算には社会保険の知識が不可欠です。したがって、社会保険労務士は大きなポイントとなります。また、給与計算に付随する社会保険や労働保険の手続きは法律上社会保険労務士しか代行することができません。したがって社会保険労務士の存在が不可欠となります。
②給与計算実施のフローは適切かどうか
給与計算をアウトソーシング(代行委託)する際の大きなメリットの一つが自社での労力の軽減です。したがって、委託する際は自社での作業がどれくらい節減できるのかを確認するために、給与計算のフローを確認しましょう。一般的な業務フローは以下の通りです。
自社 | 委託先 | |
①給与計算のための情報準備 | → | ②情報を受け取り給与計算の準備 |
③給与計算の実施 | ||
⑤給与計算結果の確認 | ← | ④計算結果の通知 |
← | ⑥給与明細の印刷・送付 | |
⑦社会保険の届出 | ||
⑧給与の支払い | ||
⑨税金・社会保険料の支払い |
以上が一般的な給与計算アウトソーシングのフローです。特に重要なのが①の情報準備です。例えば弊社あおいマネジメントサービスの給与計算代行サービスでは、基本的に給与に関係する変更事項だけをご連絡いただければ、あとは弊社で計算まで実施します。ところが、低料金で給与計算を実施している業者は、エクセル等の規定フォーマットに全従業員の給与情報を入力させるというケースがしばしばあります。その業者はこのフォーマットを専用ソフトに読み込むだけです。フォーマットを用意するのがお客様なので、計算に間違いがあってもお客様の責任になってしまい、計算後のチェックもなおざりになります。したがって、委託する際はどのようなフローで自社の負担がどれだけ減るかを確認しましょう。
③給与計算の周辺業務も対応可能かどうか
給与計算業務に付随して様々な周辺業務があります。
月次の周辺業務 | 年次の周辺業務 |
■社会保険標準報酬の届 ■住民税に関する変更届 □給与の支払い □所得税・住民税の支払い □社会保険料の支払い |
■労働保険年度更新 ■社会保険算定基礎届 ■住民税更新 ■年末調整 |
これらの業務に対応できるかどうかも重要なポイントです。給与計算を委託してもこれらの業務を自社で対応するとなるとそれなりの知識と労力が必要です。特に年次業務は専門知識とスキルが必要な作業です。上表中の■印は一般的に代行サービスの中に含まれているかオプションとして代行しており、□印は実施する業者としない業者があります。■印の業務は、最低限実施している業者を選択するのがベストです。
④締め日と支払日に関してスケジュール的に対応可能か
スケジュールも重要です。例えば当月20日〆、当月25日支払いの会社の場合、締めてから支払いまでの間が5日しかありません。しかも情報を整理している時間をいれると実質4日です。金融機関の給与振込の締め日が支払い日の3日前の場合は実質2日しか計算期間がありません。このようなタイトなスケジュールでも代行可能かどうかを確認する必要があります。ただし、連休が間に挟まったり、急な変更等がある場合に備えて、締め日と支払日は最低でも1週間以上あけることが望ましいです。
⑤機密保持体制は万全か
機密保持は当たり前のことですが、重要な事項です。業者選定の際は以下の項目をチェックしましょう。
□契約に機密保持に関する項目があるか □プライバシーポリシーを持っているかどうか ※プライバシーポリシーはホームページに掲載されている会社であれば安心です。 □社会保険労務士事務所の場合は、社会保険労務士個人情報保護保護事務所(SRP)の認証を受けているかどうか ※社会保険労務士個人情報保護保護事務所(SRP)は全国社会保険労務士会連合会による個人情報保護事務所 の認定です。認定事務所は必ずプライバシーポリシーや機密保持に関する契約事項を持っています。 |
⑥料金が適切か
料金は安ければ安いにこしたことはありません。ただし、格安で実施している業者には上述のようにほとんどの作業をお客様に実施させるケースがあります。委託できる業務の範囲と料金とを照らし合わせて業者を選定するようにしましょう。
以上、給与計算をアウトソーシング(代行委託)する際のポイントを解説しました。
※賃金・給与計算等の実務に関する情報は以下参照
◎賃金(給与)の基本 ◎賃金(給与)の決定方法 ◎給与の全体像 ◎給与計算の手順 ◎給与計算前の情報収集 ◎給与計算の実施 ◎給与の支払い ◎給与計算後の届出 ◎税金、社会保険料の支払い |
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代表 森崎和敏