有休(年次有給休暇)は企業で当たり前のように使われていますが、これについても労働基準法の定めがあります。今回は、この年次有給休暇について説明します。
★付与の条件
労働者が①6ヶ月間継続勤務し、当該6ヶ月間の②全労働日の8割以上を出勤した場合には、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければなりません。(アルバイト、パート、嘱託等の場合も同様です。)
※以下のいずれも満たす必要がある。 ①6ヶ月間継続勤務したこと ②①の6カ月の全労働日の8割以上を出勤したこと |
※出勤率は以下の計算式で算出します。
出勤率=出勤した日/全労働日
※全労働日から除外される日数
1. 使用者の責に帰すべき事由によって休業した日 2. 正当なストライキその他の正当な争議行為により労務の提供がまったくなされなかった日 3. 休日労働させた日 4. 法定外の休日等で就業規則等で休日とされている日等であって労働させた日 |
※出勤したものとして取り扱う日
1. 業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日 2. 産前産後の女性が法第65条の規定により休業した日 3. 法に基づき育児休業または介護休業した日 4. 年次有給休暇を取得した日 |
★有給休暇の日数
有給休暇は勤務期間によって以下のとおりの日数を与えなければなりません。
継続勤務年数 | 6か月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 | 5年6カ月 | 6年6カ月 以上 |
|
付与日数 | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
★パート等の短時間労働者の有給休暇
パートやアルバイトなどの短時間労働者でも、その勤務時間と期間によって以下の日数の有給休暇を与えなければなりません。支給の条件は通常の労働者と同様に6ヶ月間継続勤務し、当該6ヶ月間の全労働日の8割以上を出勤することです。
週所定
労働日数 |
年間
所定労働日数 |
継続勤務年数 |
||||||
6か月
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1年6か月
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2年6か月
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3年6か月
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4年6か月
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5年6か月
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6年6か月
以上 |
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4日
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169~216日
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7
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8
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9
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10
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12
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13
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15
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3日
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121~168日
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5
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6
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6
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8
|
9
|
10
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11
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2日
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73~120日
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3
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4
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4
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5
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6
|
6
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7
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1日
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48~72日
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1
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2
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2
|
2
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3
|
3
|
3
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★未成年者の特例(上記短時間労働者に該当するものは除く)
職業能力開発促進法第24条第1項の認定を受けて行う職業訓練を受ける労働者で、労働基準法第70条に基づいて発する命令の適用を受ける未成年者の年次有給休暇については、労働基準法72条の特例により以下のとおりとなっています。
継続勤務年数 | 6か月 | 1年6カ月 | 2年6カ月 | 3年6カ月 | 4年6カ月 | 5年6カ月 以上 |
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付与日数 | 12 | 13 | 14 | 16 | 18 | 20 |
★有給休暇の取得単位
有給休暇は1日単位で取得するのが原則です。ただし、労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば、日単位取得の阻害とならない範囲で半日単位で有給休暇を与えることも可能です。
※平成22年4月1日施行の改正労働基準法(法改正)
改正労働基準法により、労使協定を締結すれば有給休暇を時間単位で取得させることも可能となります。
★有給休暇取得時の賃金
労働者が有給休暇を取得したとき、使用者は以下のいずれかの賃金を支払わなければなりません。
①平均賃金 | 原則として事由の発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で除した金額のことです(労働基準法第12条)。 |
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金 | 日常支払っている賃金をそのまま支払う方法です。もっとも簡易でわかりやすい方法です。多くの企業が採用しています。 |
③健康保険に定める標準報酬日額 ※労使協定が必要 |
健康保険の標準報酬日額を利用します。ただし、標準報酬は実際の報酬と少なからず差異が生じます。 |
★時季変更権
有給休暇は労働者が指定した日に取得させるのが原則です。ただし、労働基準法では労働者が請求した時季に有給休暇を与えることが、事業の正常な運営を妨げる場合、使用者は他の時季にその有給休暇を与えることができるとしています。つまり、労働者が請求した日にその労働者が休むと事業運営上支障があるときは、有休取得日を変更するように指示できるのです。ただし、権利の濫用はできません。
★年次有給休暇の計画的付与
使用者は、労使協定により有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、有給休暇のうち5日を超える部分の日数は、計画的に付与することができます。例えば、ゴールデンウィークやお盆、正月休み等にこれを利用して長期休みにする企業があります。
厚生労働省のホームページでは以下の例をあげてします。
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★有給休暇の時効
有給休暇の請求権は、労働基準法第115条の規定により、時効によって2年間で消滅します。この請求権は、基準日に発生するので、基準日から起算して2年間で消滅します。例えば平成22年4月1日入社の社員の場合、6ヶ月後の平成22年10月1日に条件を満たしていれば有給休暇が発生し、ここで発生した有給休暇は平成24年9月30日まで使えるということになります。
★不利益取り扱いの禁止
使用者は労働者が有給休暇を取得したことを理由として当該労働者に対して不利益な扱いをすることは禁止されています。
※参考「労働基準法」の年次有給休暇に関る条文
(年次有給休暇)
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
2 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。
3 次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。
一 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者
二 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者
4 使用者は、前三項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
5 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。
6 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金又は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間について、健康保険法 (大正十一年法律第七十号)第九十九条第一項 に定める標準報酬日額に相当する金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。 7 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号 に規定する育児休業又はに規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。 |
以上、今回は有給休暇の説明でした。一言で「有休」と言っても奥が深いので、これらの内容を十分理解して運営しましょう。
※その他の労働時間関係の解説は以下参照ください。
1.高まる労働時間管理の重要性 2.法定労働時間と所定労働時間 3.時間外労働の基本 4.割増賃金 5.休憩の基本 6.休日の基本 7.振替休日と代休 8.労働時間・休憩・休日の適用除外 9.名ばかり管理職 10.年次有給休暇の基本 |
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