今回から就業規則の具体的内容とポイントを解説します。就業規則というのは各企業の実情や制度にあわせてカスタマイズしながら作成するものですが、ここではごく一般的な就業規則について解説します。
就業規則の全体像は大凡以下の項目です。順番や名称に法的規制はありません。今回はこの中で一番最初の総則について解説します。
1.総則 2.採用 3.異動 4.服務 5.労働時間、休憩、休日、休暇 6.賃金 7.退職金 8.退職・解雇 9.災害補償 10.安全・衛生 11.教育 12.表彰および制裁 |
★総則とは
総則は就業規則の入口です。労働基準法に規定されている絶対的記載事項ではありませんが、大変重要な部分です。総則では以下のような項目を説明します。
項目 | 内容 |
①就業規則の目的 | 労働条件や職場のルールを明確にするなどの就業規則の目的を定めます。 |
②用語の定義 | 就業規則で使われる用語の定義を定めます。例えばパートと嘱託社員の違いなど明確にします。こういった細かい事項が後々の労使トラブルに原因になりかねないので、ここで明確にしましょう。 |
③就業規則の適用範囲 | 就業規則の規定がどの従業員に適用されるのかを明確にします。適用範囲を明確にしなければ、本来正社員にのみ適用されるはずだったルールがパートにまで適用されてしまうということになりかねないため、大変重要な項目です。 |
④規則の遵守 | 会社も従業員もこの規則を守らなければならないことを明確にし、この規則の重要性をアピールします。 |
★総則の記載例
では具体的に総則を規則に記した場合の例を掲載します。
①目的
就業規則の目的を明記します。
第1章総則 |
第1条(目的) 1 この就業規則(以下「規則」という。)は、●●●株式会社(以下「会社」という。)に勤務する従業員の労働条件、服務規律、その他の就業に関する事項を定めたものである。 2 この規則に定めのない事項は、労働基準法その他諸法令の定めに従う。 |
②用語の定義
用語の定義を明確にし、用語の不理解によるトラブルを防ぎます。
第2条(用語の定義) 1 この規則に定める「正社員」とは、第2章に定める採用の手続きを経て入社した雇用期間の定めのない通常の従業員をいう。 2 この規則に定める「契約社員」とは、期間を定めて雇用された従業員をいう。 3 この規則に定める「パートタイマー」とは、期間を定めて雇用され、正社員と比較して労働時間が短い従業員をいう。 4 この規則に定める「アルバイト」とは、パートタイマーの中で社会保険が適用されない程度の労働時間の従業員をいう。 5 この規則に定める「嘱託社員」とは、定年退職後に期間を定めて再雇用された従業員をいう。 6 この規則に定める「臨時社員」とは、一時的・臨時的な業務に就くために期間を定めて雇用された従業員をいう。 |
③適用範囲
この就業規則の適用範囲を明示します。ほとんどの企業では正社員とそれ以外の社員(パートや臨時、嘱託社員など)とで労働条件を区分しているため、別個の規則を作成することをお勧めします。本例では正社員にのみ適用する規定とします。
第3条(適用範囲) 1 この規則は、正社員に適用する。 2 パートタイマー、アルバイト、契約社員、嘱託社員、臨時社員の就業に関しては、別に定める規則または個別の労働契約書による。 |
④規則の遵守
労使ともに規則を順守する旨を明記します。
第4条(規則の遵守) 会社及び従業員は、この規則を遵守し、相互に協力して業務の運営に当たらなければならない。 |
★総則のポイント
総則で最も重要なのは用語の定義と適用範囲です。適用範囲が不明確だったために起きた労使トラブルは少なくありません。ここでは、就業規則が自社のどの社員に適用されるのかを明確にしましょう。目的や規則を守らなければならにことも明分化にし、就業規則の位置づけを明確にしましょう。
以上、総則についての説明でした。
※就業規則の説明については以下参照
1.就業規則とは 2.就業規則の記載内容 3.就業規則の作成手続き 4.就業規則の良し悪し |
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代表 森崎和敏