【賃金・給与】賃金(給与)の決定方法

今回は賃金の決定方法について説明します。

賃金の決定方法は特に法律等で定めがあるわけではなく、企業によってさまざまです。その中で代表的な賃金決定方法は以下の通りです。

1.経営者の裁量による算出
2.モデル賃金に基づく算出
3.人事制度(賃金制度)に基づく算出

それぞれについてもう少し詳しく説明します。

1.経営者の裁量による算出
小企業や零細企業に多くみられる算出方法です。小企業や零細企業では従業員数が少ないため、経営者の目が従業員全体に行き渡ります。経営者が日常の業務行動を管理する中で各社員を評価し、その評価に基づいて給与を算出します。経営者の裁量と聞くと、経営者が鉛筆なめなめしてお気に入りの社員だけ処遇をよくするようなイメージがありますが、私は経営者の裁量による算出は小企業や零細企業では当たり前と考えてもおかしくないと思います。経営者は一番リスクをおっているわけですし、少数精鋭でがんばっている企業では経営者と考え方や方向性が合わない社員がいることはマイナス面が大きいです。給与には経営者の考え方も反映されやすいです。従業員を大切に思う経営者でしたら、給与も同業他社より良い水準に設定できます。したがって決して悪い決め方ではありません。ただし、経営者の裁量で決定する場合、経営者は同業他社や同地域の賃金水準、標準生計費等を確認してから決めるように注意しなければなりません。

メリット デメリット
○経営者の思いを反映しやすい。
○経営者と考えや方向性をともにする社員を評価できる
×世間水準等を無視すると給与水準がおかしくなる
×極端な上げ下げをすると社員の不安感を生む

 

2.モデル賃金に基づく算出
各企業で作成したモデル賃金表に基づいて算出します。モデル賃金表は年齢や勤続年数、社員の社内等級等によって設定されるのが一般的です。モデル賃金表があると、賃金が明確に算出できるため裁量で決定するよりも簡単に従業員の給与を算出することができます。従業員に周知すれば、従業員も賃金について理解が深まり安心することができます。ただし、モデル賃金表が同業他社の給与と比べて水準があまりに低いと従業員の不安を生むことになります。逆に高すぎる場合は、人件費が企業の収益を圧迫する可能性もあります。したがって、モデル賃金表を作成するときは世間水準や会社の業績見込み等を考慮して慎重に作成しなければなりません。モデル賃金策定の際は専門家を活用するのも一つの有効な手段です。

メリット デメリット
○賃金の決定が簡単。
○従業員が安心できる。
×世間水準より低すぎる水準では従業員が不安になる。
×世間水準より高すぎる水準は収益を圧迫する。

 

3.人事制度(賃金制度)に基づく算出
賃金を決める方法として最も合理的な方法です。大企業や中堅企業のほとんどがこの方法を採用しています。一般的に人事制度は等級制度、評価制度、賃金制度で構成されます。

等級制度 従業員をランク分けするための制度です。企業によって「資格等級」とか「格付け」と呼んだりします。
評価制度 従業員を評価するための基準を明確にしたものです。評価制度に基づいて従業員の成績(考課)がなされます。
賃金制度 従業員のモデル賃金です。等級制度に基づく等級や評価制度の基づく評価によって金額が分かれるようになっています。

人事制度はこれらの要素で構成されます。合理的で納得性・公平性が高い半面、運用や管理が複雑です。人事制度を適正に運用するには専属の担当者が必要になります。また人事制度の策定は企業単独では難しいため、企業内部に人事制度に精通した担当者がいな場合は外部コンサルタントなどを活用する必要があります。良い制度を作るためには時間もかかります。まずは簡易な制度から導入し、管理職や社員を教育しながら徐々に制度を醸成させていくのが一般的です。

メリット デメリット
○合理的な制度で公平性・納得性が高い
○従業員が安心できる。
×運用管理が複雑。
×自社独自で策定するのは難しい。
×良い制度ができるまでに時間がかかる。

 

以上、賃金の決定方法について解説しました。経営者の考え方や業種、規模によってどの方法が良いかは変わります。自社に最適な制度を検討して導入しましょう。

賃金・給与に関する情報は以下参照

◎賃金(給与)の基本
◎賃金(給与)の決定方法
◎給与の全体像
◎給与計算の手順
◎給与計算前の情報収集
◎給与計算の実施
◎給与の支払い
◎給与計算後の届出
◎税金、社会保険料の支払い

◎給与計算のアウトソーシング(代行委託)

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代表 森崎和敏