『産業保健体制の整備1-2 ~体制作り(任意部分)~』
前回に引き続き、産業保健体制の「体制作り」について説明します。
1.体制作り(法定) 体制作り(任意) |
衛生管理体制・組織の整備 |
2.ルール整備 | 規程・ルールの明確化 |
3.教育 | ルールや基礎知識の教育・周知徹底 |
4.適正運用 | 規程・ルールに則した効果的な運用 |
今回は任意部分(下表の黄色い部分)についての説明です。
法定 |
法定部分 |
健康 |
1.過重労働対策 |
2.健康診断 | |||
規則 |
3.就業規則・休職規程 | ||
体制 | 4.(安全)衛生推進者 | ||
50人未満任意 |
組織 |
5.産業医 | |
6.衛生管理者 | |||
7.衛生委員会 | |||
8.安全委員会 ※特定業種のみ | |||
任意 |
メンタルヘルス対策 |
9.精神科顧問医 | |
10.メンタルヘルス研修 | |||
11.休職・復職プログラム | |||
12.組織診断 | |||
13.相談体制 | |||
健康作り |
14.メタボ対策 | ||
15.健康教育 |
任意とは言え、厚生労働省の指針にも掲載されているものであり、非常に重要性が高い項目です。現在は指針に留まっていますが、将来的には義務化されることも考えられます。
またメンタルヘルス対策をするためには、この任意部分を整備せずに法定部分だけの対応では効果が出ないのが現状です。
では、個々の項目について説明します。
9.精神科顧問医
非常に重要です。メンタルヘルス対策では産業医以上に重要といっても過言ではありません。(産業医が精神科医の場合は不要ですが、一般的に企業の産業医は内科や外科の先生が多いので、メンタルヘルス対策としては精神科医と顧問契約されることを強く推奨しています。)
※顧問精神科医の業務 ・メンタルヘルス不調者の診断、相談 ・メンタルヘルス不調者の就業可否の判断 ・職場環境の診断、指導、助言 ・定期的な従業員のメンタルヘルスケア ・休職者の定期的診断、ケア ・長時間労働者のヘルスケア |
上記の業務は精神科医でなければ正確な対応が難しい部分です。
カウンセラーや保健師でも相談対応等はできますが、医学的な判断や正確な指導は医師でなければできません。
精神科医との顧問契約は以下のメリットがあります。
※顧問精神科医との顧問契約メリット ・メンタルヘルス不調者に対して医学的判断に基づいた正確な対応が出来る。 ・専門家の判断である為、従業員やその家族に納得してもらえる。 ・定期的なヘルスケアをしてもらえるため、メンタルヘルス不調者の予防ができる。 ・経営者や人事担当者が気付かなかった職場環境の改善が出来る。 ・従業員の安心感を醸成できる など |
もちろん医師との顧問契約になる為、ある程度の費用は発生しますが、メンタルヘルス不調者への対応にかかる労力、時間、費用、さらには裁判沙汰になったときの費用や損害賠償等を考慮すれば、十分な費用対効果があります。
ただし、精神科医と顧問契約する際は以下の点に注意してください。
※顧問精神科医との顧問契約時の留意点 ・当該医師が産業分野の十分な知識を有していること、または産業医資格があること ・十分な診療経験を有していること ・企業側の価値観や判断を理解できること ・毎月1回は経営者または人事担当者とのミーティングの時間を持てること |
上記の点に当てはまらない場合、「名ばかり顧問医」になる可能性がありますので十分ご注意ください。
10.メンタルヘルス研修
メンタルヘルス不調の予防や、不調者への適正な対応を正しく理解するためには、従業員1人1人がメンタルヘルスに関する知識を深めなければなりません。また、部下を持つ上司は、部下のメンタルヘルスケア(ラインケアと言います)についての知識も持っていなければなりません。従がって、目的の応じた研修や教育が必要になります。
※教育の例 ・ストレスケア研修 ・ラインケア研修 ・人事担当者、経営者向け研修 ・労務、法律研修 など |
11.休職・復職プログラム
メンタルヘルス不調者が発生したときの対応や、その不調者の職場復帰をサポートする為にルールを明確にしておく必要があります。それが「休職・復職プログラム」です。法定部分にあった「休職規程」を運用レベルにまで落とし込んだものになります。これについては厚生労働省からも詳しい指針が出ています。
ルールの詳しい内容については「ルール作り」のところで詳しく説明します。
12.組織診断
メンタルヘルス不調者を予防し、活き活きとした職場を保つためには、定期的なチェックが必要です。組織診断を定期的に行い、問題点を把握することで常に快適な職場を維持することが出来ます。これはメンタルヘルス対策だけではなく、各職場の状況把握、業務上の問題点、人間関係の問題点の把握など様々な問題解決に役立ちます。
※効果的な組織診断を行う為の留意点 ・社員のストレスと職場環境との因果関係が把握できる ・グループや所属別など属性別の結果分析ができる ・個人別の結果が各個人へフィードバックされる ・個人結果が保護される(犯人探しをしない) ・結果に対してのアクション(改善活動)がされること |
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13.相談体制
従業員が自分または他人の不調に気付いたときに簡単に相談できる体制を作ることが重要です。いきなり精神科医と面談するのは気が引ける従業員もいます。そこで簡易窓口を作っておくことで従業員の安心感が醸成できます。
※相談体制の例 ・人事担当者による相談窓口 ・保健師による相談窓口 ・精神科顧問医による定期相談 ・産業カウンセラーによる相談窓口 |
14.メタボリックシンドローム対策
メタボとメンタルヘルスと関係があるの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、体の病気が原因でメンタルヘルス不調になる人も少なくありません。特に糖尿病などの難病は精神状態にも影響を与えます。したがって、以下のような対策を検討することが必要になります。
※メタボ対策の例 ・社内運動会やウォークラリー等のイベント開催 ・健康相談窓口の設置 ・産業医や保健師による定期健康相談 ・スポーツクラブとの法人契約 ・運動部の創設 など |
15.健康教育
社員が健康への理解を深め、それぞれの健康観が向上することで会社全体の健康意識が向上します。ルールの徹底や社員の安心感情勢にも役立ちます。
健康教育だけを単独で開催するのも良いですし、入社時研修や管理職研修の時などにプラスアルファで開催しても良いでしょう。
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以上、「体制作り」の説明でした。
次回は「ルールの整備」について解説します。
※静岡(清水、藤枝、焼津、島田、富士)のメンタルヘルス対策はこちら⇒メンタルヘルス対策
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代表 森崎和敏