【給与計算②】給与計算の手順

今回は給与計算のステップについて説明します。実際の計算を行うには給与計算の全体像および計算の手順を把握しておく必要があります。

★給与計算の手順
給与計算は概ね以下の手順で実施します。

1.給与計算のための情報収集
2.給与計算の実施
3.給与の支払い
4.社会保険の届出
5.所得税、住民税、社会保険料の支払い

もう少し詳しく解説します。

1.給与計算のための情報収集
給与計算をするために必要な情報を収集します。主な情報は以下の通りです。

・社員の昇給情報
・社員の各種異動情報(入退社、結婚、出産、住所変更など)
・社員の勤怠情報(残業、休日労働、遅刻早退、有休取得など)
・関係法律の法改正情報

これらの情報は基本給や諸手当の計算に必要になるため毎月収集しなければなりません。
社員の結婚や住所まで!? と思われるかもしれません。しかし、社員の結婚は扶養家族の増減に関係し、所得税や健康保険料の計算に影響を及ぼします。社員の住所変更は住民税の支払い・報告先への影響や通勤手当への影響があります。多くの企業では、これらの異動情報は社員が異動報告用紙を上司や人事へ提出する仕組みとなっています。
※さらに詳細はこちら⇒給与計算前の情報収集

2.給与計算の実施
給与計算に必要な情報がそろったら実際に計算を行います。給与の計算方法は主に以下の通りです。

ハンド計算 電卓やそろばんを使って手計算します。かなりの上級者向きです。給与計算に関する完全な知識と計算能力が求められます。
エクセルなどの表計算ソフトを利用した計算 これも上級者向きの方法です。まずはエクセル等の表計算ソフトで数式を作らなければなりません。そのためには給与計算に関する深い知識が必要です。またパソコン操作のスキルも求められます。
給与計算ソフトによる計算 初心者から上級者まで対応できる計算方法です。給与計算の基本的な設定はすべてソフトに組み込まれているため、必要な情報さえ入力すれば計算ができます。ただし、初期設定や各種届出等に関する専門知識は必要になります。
社会保険労務士などアウトソーシング(代行者)の利用 最も安全かつ簡単な方法です。給与計算に必要な情報を代行者に送れば、それを基に給与計算を実施し、計算結果や振り込み用のデータを返送してくれます。計算する人間はその道のプロ(専門家)のため、安心して任せられます。人事担当者に給与計算の知識が全くなくても大丈夫です。ただし、利用料等のコストが発生します。また、業者によっては経験や実績が少ないものもありますので、業者選びの際は注意が必要です。(あおいグループは安心です(^-^))

給与計算が完了したら必ずその内容をチェックします。余裕があればダブルチェックしましょう。給与は間違いがあった場合、特に過払いや未徴収があると後から社員にその分の金額を支払ってもらわなければなりません。社員にとっては不快なことですし、労使のトラブルの基です。給与計算の実施については、自社の担当者の知識やレベル、コスト等を鑑み、必ず間違いのない方法を選択しましょう。

3.給与の支払い
給与計算が完了したら給与の支払い手続きをします。支払い方法は以下の通りです。

手渡し 封筒に現金を入れて手渡しします。給与をもらった実感がもっとも湧く方法です。ただし、現金の持ち運びは紛失や盗難のリスクがあるため、現在はあまり採用されていません。
銀行普通振り込み 銀行で振り込み手続きを行います。社員1人1人について振り込み手続きをするため、人数が多い場合は手間がかかります。ただし、給与支給日当日でも対応できるというメリットがあります。
給与総合振り込み 給与用の振り込み方法です。専用の用紙に社員の振り込み一覧を記入して銀行に渡せば簡単に振り込み手続きができます。用紙は給与計算ソフトで作成することもできます。ただし、銀行によって締め日があるため注意が必要です。
インターネットバンキング インターネットバンキングを申し込めば、画面上で振り込み処理ができます。給与計算ソフトによっては振り込み用のデータも作成できるので、そのデータを取り込むだけで振り込み手続きができます。ただし、インターネットバンキングの手数料が毎月発生します。また、簡単にできる半面、ミスにも気付きにくいので注意が必要です。

昔は現金を封筒に入れて手渡しするのが一般的でしたが、最近はほとんどの企業が銀行振り込みによる支払いを行います。ただし、銀行振り込みにする際は社員の同意が必要です。また、社員が指定する口座(会社指定ではない)に振り込まなければなりません。会社が振込口座を指定できるという勘違いも少なくありませんが、法律上社員が指定する口座と決まっています。会社指定にしたい場合は、社員と協議して社員の同意を得るようにしましょう。

4.給与支払い後の届出
これは給与の支払いを待たなくても実施できますが、この解説では計算後にもってきました。主に以下の届出があります。

・標準報酬月額変更届
・賞与支払届
・算定基礎届(年1回)
・労働保険年度更新(年1回)
・給与支払い報告書(年1回)
・法定調書(年1回)
・その他各種社会保険変更届

さまざまな届出が必要なため、自社で対応する場合は、関係する法律知識が必要です。

5.所得税、住民税、社会保険料の支払い
最後に忘れてはならないのが税金や社会保険料の支払です。

所得税 給与から天引きした所得税を翌月10日までに支払います。ただし、10人未満の企業でしたら「納期の特例届」を提出することで半年に1回の支払いに変更できます。
住民税 給与から天引きした住民税を翌月支払います。市町村によってい支払い先が異なるため、注意が必要です。
社会保険料 健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料のことです。当月徴収した分を翌月支払います。支払い方法は振り込みや引き落としなど保険者によって異なります。

支払い漏れがあった場合、延滞金を徴収されてしまいますので、必ず支払い漏れが無いようにしましょう。

 

以上が給与計算の手順です。様々な知識が必要とされるため、給与計算担当者の教育は慎重におこないましょう。

賃金・給与に関する情報は以下参照

◎賃金(給与)の基本
◎賃金(給与)の決定方法
◎給与の全体像
◎給与計算の手順
◎給与計算前の情報収集
◎給与計算の実施
◎給与の支払い
◎給与計算後の届出
◎税金、社会保険料の支払い

◎給与計算のアウトソーシング(代行委託)

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代表 森崎和敏