『産業保健の目的と必要性』
「うつ病患者が過去最高に」の記事の続きとして、今日から「企業のメンタルヘルス・うつ病対策」について解説したいと思います。
今回のテーマは「産業保健の目的と必要性」です。
メンタルヘルスが不調になる原因は様々です。恋愛、家族、仕事、などいろいろなことが要因でメンタルヘルス不調に陥る可能性は誰にでもあります。
しかし、もし従業員がメンタルヘルス不調に陥ると以下のように様々なデメリットがあります。
★メンタルヘルス不調者発生時のデメリット
●従業員が業務に集中できない ●メンタルヘルス不調者対応への時間・労力・費用の負担 ●メンタルヘルス不調の原因が企業にあるとされた場合、解雇できない ●不調者の休職による戦力ダウン ●訴訟を起こされたときの訴訟費用や時間・労力の負担 ●訴訟で敗訴したときの高額な賠償金等の負担 ●社会的信用の失墜 |
以下に具体例をあげます。
従業員のAさんがうつ病で休み始めました。 Aさんがその原因は上司にあるとして、人事担当者に相談に来ました。 人事担当者はAさんの話をよく聞いた後に、当該上司を呼び出して事情聴取をしました。しかし、Aさんの話と上司の話には食い違いがあります。 さらに詳しい話を聞いた結果、上司は「厳しくしかったつもり」、Aさんは「パワハラを受けた」と主張しています。 人事担当者は困ったため、Aさんの主治医から話を聞くことにしました。 主治医の話では確かにAさんのうつ病の原因は上司との関係によるところが大きいということです。 しかし、この上司は部下を厳しく叱ることもありますが、周囲からの信頼が厚く、会社への貢献度が高い人間です。 人事担当者はAさんに休職を進めましたが、Aさんは上司の謝罪を求めています。そして、場合によっては訴訟を起こすことも検討していると話してきました・・・ |
人事担当者は日常業務があるにも関わらず、該当者からの事情聴取、調整会議、上司への報告、医師への相談、さらには弁護士への相談も必要になるでしょう。相当な時間と労力と費用が必要になります。しかも、日常業務が手つかずになります。
こういったときに、皆様ならどう対応しますか?
非常に複雑で難しいケースですが、実は従業員がメンタルヘルス不調に陥るとこのような複雑な問題が発生することが少なくありません。
さらに以下は実際に近年裁判で損害賠償が認められた事例です。
デンソー訴訟(2008/10/30) | デンソーの男性社員のうつ病発症について、名古屋地裁が長時間労働など業務の一部との因果関係を認め、同社や出向先のトヨタ自動車に計約150万円の賠償を命じた。 (判決確定) |
東芝訴訟(2008/4/22) | 元管理職社員のうつ病の原因は業務に起因するとし、当該社員の解雇を無効とし、賃金や慰謝料など約2,700万円の支払を命じた裁判。東芝は即日控訴した。 |
スズキ訴訟(2007/5/16) | スズキの男性社員が自殺したのは長時間労働に起因するうつ病が原因として、両親が損害賠償を求めた訴訟で、同社が6,000万円を支払うなどの条件で和解した。 |
したがって、こういったリスクから会社を守る為に、衛生管理体制を整える必要があります。特に健康に留意した衛生管理体制を「産業保健体制」と呼びます。
この産業保健体制を整備すればリスク防衛だけではなく、従業員の活力向上につながり、活き活きした職場作りにも役立ちます。
★産業保健体制を整える目的
リスク防衛 | ◎コンプライアンス(法令遵守) ◎労使トラブル防止 ◎CSR(社会的責任) |
組織活性 | ◎社員の活力向上 ◎快適職場の形成 |
では、実際に何から手とつけたら良いのでしょうか。今後のブログで解説させていただきます。乞うご期待下さい。
次回は「体制の整備」について解説します。
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代表 森崎和敏